介護保険料の引き上げが話題になりましたね。
今年度、40~64歳の人が負担する介護保険料の平均月額は、6276円になる見込みだそうです(実際の額は個々の所得により異なる)。
2000年の介護保険制度がスタートしたときは2075円。当時より3倍以上、過去最高を更新だそうです。
というか、更新も何もずっと上がり続けているわけだが……。
ただでさえ物価が上がり、支出が増えている現在、これ以上手取りが減るのは勘弁してほしい…というところですが。こればかりはどうしようもない。
介護保険料が上がっているのは、言うまでもなく超高齢化のため。
2000年当時、75歳以上人口は900万人でした。それが2023年には、約2000万人。2倍以上になっています。
要介護(・要支援)の認定者数は、2000年は約256万人。2021年で690万人。約2.7倍です。
かつてなら要介護になる前、60代や70代に病気で亡くなる人も多かったのです。
ところが今は、平均寿命が男性で81歳、女性は87歳。
しかし、80代も半ばになると、要介護認定を受けている人が半分以上になる。そこからさらに、90代まで長生きする人がざら。
介護サービスが入ることで、ケアが手厚くなり、寿命が伸びるという側面もある。
要介護者の人数が増えているのと同時に、1人の人の要介護期間も長くなっているのです。
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デイサービスやヘルパーの利用、施設入所など、介護サービスを受けることで費用が発生するわけですが、その内訳は、基本的に1割がサービス利用者の自己負担。残りの9割を介護保険料と税金(公費)で折半します。
つまり、介護サービス全体の45%を、介護保険料がまかなっているのです。
要介護の人が増えれば、発生する介護費用もそれに比例して増える。
当然、財源である介護保険料を増やさざるを得ない──。
とはいえ、自分自身がまだ介護サービスを利用する年齢ではない現役世代、「なぜ自分たちが払わないといけないのか」という憤りを持っている人も少なくない…?
しかし、介護保険制度とは、根本的にそういうものではないのです。
介護保険制度がなぜ始まったのか。25年近く前のことで、私たちはすっかり忘れていますが、この制度の目的は「家族の介護負担を減らす」ことだったのです。もっと言えば、かつて介護の担い手だった女性(嫁)を介護から解放すること。
もう家族で介護をする時代じゃない。お年寄りの面倒は社会全体で見ましょうよ──。そういう考えのもとにある制度なのです。
だから、現役世代が「なぜ自分たちが…」と思うのは間違っていて、だったら保険料を出さない代わりに、自分で親の介護を全部してくださいよ、ということなのです。
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そう、実際に自分の親に介護が必要になったとき、介護保険制度のありがたみが初めてわかる。
自分の親を自分だけで支えるのではなく、みんなに支えてもらう。さらに言えば、自分の親だけでなく、他の人の親を支える側にもなる。
その「支え合い」こそが、まさしく保険制度というもので。
だから、その支え手としても参加するべく、ヘルパーの仕事をしているのです。母が特養でお世話になる代わりに、自分は地元の高齢者の生活を支える。
介護保険という制度、まだまだ課題は多いですが、よくぞ作ってくれたと思っているのです。
いや、これがなかったら、いったいどうなってしまうんだろう。今の生活は絶対に成り立たない。
制度存続のために、喜んで介護保険料を支払おうと思っています。どんどん上げてもらっていい。
団塊世代が続々と後期高齢者になり、これからますます高齢化が加速するので、どちらにしても介護保険料は上がる一方でしょう。
それに、ヘルパー職につく身としても、介護保険料が上がるのは大歓迎だし。
そういう視点からこの制度を眺められることも、介護職の副業を始めてよかった点です。
介護保険制度については、元厚労相官僚で、制度設計を担った香取照幸氏の著書が勉強になります。
専門書ですが、高齢者福祉に興味のある人には非常に刺激の多い本です。私も何度も読み返しています。