消防署で毎月開催している、「救命講習」に参加してきました。
心肺蘇生(いわゆる心臓マッサージ)やAEDの使い方など、応急手当を学ぶものです。
介護職員初任者研修の授業で、高齢者は食べ物を喉に詰まらせる「窒息」事故がとても多い、と習いました。
そのときの講師の先生は特養に勤めており、実際にそうしたケースに何度も遭遇している、と。
「喉に詰まったものが出るまで、背中を叩き続けるのです」
とのこと。その叩き方(背部叩打法)も習いました。
…介護の現場に入ったら、遭遇する可能性は十分にありそうだなあ。とくに、自分は一人で利用者さん宅に入る訪問介護ヘルパーをするつもりであり、いざというときは自分にその命がかかってくる。
窒息の応急手当だけでなく、心臓マッサージなどの救命方法も知っておくべきだな。
そう思っていた矢先、駅の構内に消防署の救命講習の貼り紙が貼られていたのです。
…いや、きっとずっと前から貼られていたのだけど、私が気づかなかっただけだろう。意識が向いていたから、ようやく目に飛び込んできたわけで。
これはと思い、申し込んだのでした。
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つい先日、講習内容に関わるような出来事がありました。
時々、子供と一緒に銭湯に行くのですが。
この日、お風呂から出ると、隣の男性の更衣室が何やら騒がしい。
「パットを外してください」「解析中です」などという機械の音声が聞こえる。
あ、これはAEDを使っているのだな、と思いました。
着替えて更衣室を出ると、銭湯の外に消防車が停まっている(*_*)
銭湯の受付の人が、男性更衣室を慌ただしく何度も出入りしている。「大きいビニル袋ですね」などと、更衣室の中に声をかけながら。
しばらくすると、男性更衣室から一人の男性が、消防士さん3人に担架に乗せられて出てきました。
男性の口には人工呼吸器が付けられており、消防士さんが心臓マッサージを施している。この現場、初めて見ました。
ヒートショックによる心筋梗塞、でしょうか。まだそれほど高齢ではなさそうだったけれど…
男性は外に停まっていた救急車に引き渡され、運ばれていきました。男性の無事を祈るばかり…
(ちなみに、なぜこのとき消防車が出動していたのか。後で調べたところ、心肺機能停止状態の場合、迅速な心肺蘇生のために消防士が出動するそうです。やはりヒートショックだったのかな…)
娘も初めて救急現場を見て、衝撃を受けたようで、「あの人大丈夫だったかな」と帰る道すがらずっと言っていました。
「自分の前で人が倒れたら、自分が助けるんだよ。その方法を、今度ママが習ってくるからね」
と話しました。
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さて。
講習会は10名の定員。男性ばかりかな…と思っていたら、男性は1人だけ、あとは全員女性でした。しかも、私と同じかそれより上の世代の方。70代くらいの方もいた。
みなさん、どんな理由で受講したのだろう。20歳そこそこの若い女性が知人同士で2人参加してましたが、消防署の人と話しているのが漏れ聞こえたところ、幼稚園の先生らしい。園から講習を受けるよう義務付けられているようで。
そうした、勤め先からの要請で受講している人もいるようです。
70代の方は、「町内会でこれまで何度も受けている」と言っていた。そういうルートの人も多そうだな。
私のように、介護職のため、という人もいるでしょう。
講習内容は、テキストをベースに映像を見るのがメイン。その合間に、実技を行います。
この講習で行った実技は、心肺蘇生の胸骨圧迫(心臓マッサージ)と、AEDの使い方。
本当は人工呼吸(いわゆるマウス・トゥ・. マウス)もあるのですが、コロナ下ということでなしに。
こんな感じで実技のセッティングがされています。
左上の器具がAED。AEDって難しそうと思っていたけれど、非常に簡単でした。誰でも使えるように操作もシンプル、音声ガイダンスに従えばいいようにできている。
胸部圧迫(心臓マッサージ)も、どうやってやるのだろう、とずっと思っていた。ぐいぐい押したらすごく痛いのでは?肋骨が折れて心臓に刺さったらどうするのか…
…素人の発想でした。心臓マッサージを受ける人は、心肺停止状態で意識がないわけで。押されて痛くて飛び起きるなら、これ以上のことはない。押されても意識が戻らないから、押し続けるのです。
また、押すのは肋骨ではなく、肋骨をつないでいる真ん中の太い胸骨。そこを押しても、心臓に刺さることはない。ただ上から圧迫するだけ。
また、相当な力を入れて押さないと、心臓に圧迫が届かない。ひざまずき、全体重をかけて、速いスピードでぐいぐい押します。これを救急車が到着する7分後くらいまで、ずっとやり続けなければならない。
…一人じゃちょっと無理かも(*_*)
いやしかし、自分しかいなかったら、自分しかその人の命を救えない。やるしかないでしょう。
そうしたときにはきっと、「火事場の馬鹿力」が出て、やれるのではないかと…
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その他、意識がない人にはまず肩を叩いて声をかけること、大声で人を呼ぶこと、呼吸があるか確認することなど、応急手当の基礎的な流れを学ぶことができました。
もちろん、実際の現場に遭遇したら、絶対に動転してしまうと思うし、模擬と本番は違うということもわかっているけれど。
模擬でも、経験があるのと経験がないのとでは、大違いかと。
私これまで、あちこちに設置されているAEDを見て、「これがあると救命確率が上がるんだったよなあ」と知識としては知っていても、「…でも、使い方わからないから、その場に居合わせても私がこれを取り出すのは無理だな」と、いつも思っていた^^;
それに対して、罪悪感、社会人としての義務を果たしていない感を覚えていた。
でももう、大丈夫。AEDは攻略した…!
長年気になりモヤモヤしていたことが、これでクリアできた。
銭湯で倒れた男性、もしあの人が女性で、自分の前で倒れたら。今度は自分が心肺蘇生を施せる。
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帰宅後、早速子どもたちに胸骨圧迫の方法を教えました。
そうしたら、娘がいきなり「こう?」と、私の胸を思い切りぐいっと押してきた^^;痛くて飛び上がりました。
そう、子どもの力でもけっこう痛く、胸が苦しくなるのです。その動作を繰り返すことで心臓が蘇生するとは、つくづく生き物の体は不思議です…
さて後日、自宅あてに「救命技能認定証」が送られてくるそうです。
認定証の有効期限は3年とのこと。3年間、救急現場に遭遇しなければ、きっと技術を忘れてしまうから、3年後、また受講しよう。
受講料は1500円。とても良くまとまっているテキストももらえて、大変有意義な講習でした。