訪問介護ヘルパーとして所属する事業所で、社員の男性が育休をとることになりました。
半年ほど前に第一子が生まれ、これまでは奥様が育休をとり、これからは彼が育休、奥様は職場復帰となるようです。
なんと…素晴らしい!!
実は私、ひそかに本業の職場で「男性の育休」を推進していまして。これから家庭、子供を持とうとする若い男性たちに、「育休取りなよ」と啓蒙しているのです。
「女性活躍」が叫ばれる今、たしかにワーキングマザーが働きやすい制度は整ってきた。しかし、ワーキングマザーの働き方が楽になったかと言うと。大いに「活躍」できているかと言うと…
まだまだそうなっているとは到底思えない。
「女性の側」の制度ばかり整えたところで限界があるし、結局のところ「女性よ、もっと頑張れ」と言っているようなもの。
働く母親の背後には、(ほぼ)同数の「働く父親」がいるわけですよね。
あまりに当たり前のことなのだけど、母親だけが両立の大変さを味わうのはおかしな話で。
女性に第一線で働けと言うなら、男性も家庭の第一線で家事育児を担うのが道理というもの。
男性たちの働き方を変えていかなければ、女性たちの活躍はおぼつかない。
…10年以上、ワーキングマザーとして働き、管理職も務め、一連の働き方改革も行ってきた私が、今一番強く思うことです。
そこで、育休。
そもそも、なぜ「育休は女性が取る」ことが当たり前のようになっているのか。
子供が生まれたとき、夫に育休を取れないか打診したことがありました。
夫の答えは、「いやあ、無理だな」でした。
そのときは「まあそうだよね」と思いました。けれども、ワーキングマザーとして働き続ける中で、
「なんで、当たり前のように『無理だな』で終わってしまうのか」
「なんで、会社に掛け合ってみようともしないのか」
と、夫への恨みの気持ちが湧いてきました。
そう、当たり前のように「男は育休をとらない」ことが前提になっている、その空気感。
それこそを打破していかないと、真の女性活躍、真の男女平等はおぼつかない。
あれから10年以上経ち、確実に空気は変わってきている。男性の育休を受け入れる土壌は形成されつつある。あとはそれを後押しするだけ。
…なのですが、現実にはまだまだ、ですよね。
「男性の育休」は増えてきたとはいえ、いまだ取得率は12%程度にすぎません。
だから、先の彼は素晴らしいのです。
加えて素晴らしいのは、取得期間の長さ。
職場復帰は保育園入園次第で、いつになるか未定だそう。私の地域では0歳の途中入園はまず難しいので、4月の新年度が現実的か。となると、10ヵ月近くの育休に。
「男性の育休」は取得率が低いうえ、取得期間も1ヵ月未満が大多数なのが現状。
そんななか、本格的に育休をとるというのは、やはり訪問介護という福祉業界だからか。この会社では普通のことなのだろうか。
「いや、普通ではないですね」
…あ、そうなんだ。いやそうだよね。人が常に足らず、シフト制の訪問介護事業所だからこそ、社員さんが一人でも長期に休むのは大きな痛手ですよね…
それでも育休を取得した彼の勇気に拍手です。「ひとり働き方改革」を実践してる!仲間だ!
・・・・
そして、何と言ってもすごいのは、「ワンオペの育休」をするということ。
先にも書いたとおり、多くの男性の育休取得期間は1ヵ月未満なわけですが、おそらく「奥さんも家にいての」育休ですよね。
もちろん、ただでさえ大変な赤ちゃんのお世話、手が2つあるのはありがたいことですが。
…やっぱり「お手伝い」の域を出ないかなあ。
しかし、彼はひとりで家事育児を担う。その間、奥さんは仕事に復帰する。まさしく夫婦平等…
それを選択したのも素晴らしいが、それを選択できるだけの家事育児のスキルを持っているだろうことが、なおのこと素晴らしい。
たとえ会社に制度があっても、ひとりで家事育児を回すのは無理だから、長期の育休を取らないという男性も多いでしょう。「任せられない」という女性側の気持ちも…
彼の場合、やはり介護業界に所属する人、ということはあるのかもしれない。
「人の世話をする」という意味で、介護と育児はつながるので。ケアに抵抗がない、自然とできる人なのでしょう。
そう考えると、男性が育休を取るハードルを下げるには、男性の家事育児スキルのアップが必要になるなあ。
それにはやっぱり、我々「男子の親」が、息子に子供のときから家事を「仕込んでおく」必要がありそう。
男性も女性同様、家事育児をするのが当たり前、と子供のうちに刷り込んでおくことも大切。
・・・・
そしてもうひとつ、男性が育休を取るための動機づけとして、「育休手当のアップ」が不可欠だと思う。
男性側が育休を取らないのは、主に男性の方が女性より給与が多いせいもある(これも男女の賃金格差という問題が隠れているが、それはまた別の話で…)。
育休手当は今のところ、月給の67%しか支給されない(育休開始180日目まで。それ以降は50%)。
一家の大黒柱の給与が33%減になるのは、大きな痛手ですよね…
実際には、社会保険料などが引かれなくなるため、手取りで20%減というところのようですが。
それでもだいぶ大きな減額。40万円の手取りなら32万円、8万円の減額に。これは躊躇して当然…
ここが絶対、ネックになっていると思うんですよね。
そこで政府には一刻も早く、育休手当の支給割合を給与の80%に上げてほしい…!
80%に上げれば、社会保険料等の控除を加味したとき、手取りとだいぶ近い額になる。それなら家計に大きく響くことなく、男性も育休を取る気持ちも持てる…はず。
我が家は私の方が夫より収入が多く、言ってみれば大黒柱。育休を取るとき、私の収入源は大きな痛手でした。
が、実は会社から、育休中も給与をもらっていたのです。育休中も働いていたからなのですが。
管理職として部下の仕事を見たり、出産前に仕掛っていた書籍を進行させたり。赤子を抱えながらなので、ぼちぼちしか働けませんでしたが、それに見合う程度の額をもらっていた。
その給与と育休手当を足して、ちょうど月収の8割になった。なので、それほど大きく家計に響かず、安心して長期の育休をとれたのでした。
それに、育休中はずっと子供に張り付いているわけで、ほとんど家におり、お金もあまり使わない。支出が減ることも、家計を悪化させずにすむ要因でした。
この経験からも、育休手当の支給割合引き上げは重要なポイントだと思っています。
現に政府で検討されているようですが。まだ実現はしていない様子。
早い実現を望みます。