先月のことになりますが。
日経新聞に、こんな記事が載っていました。
会社員4000人以上にアンケート調査を行ったところ、勤務先が副業を認めている人が約3割だったとのこと。また、副業を探すなど関心を持っている人は7割超。
昨年の働き方改革から新型コロナ感染拡大を受け、期せずしてすっかり定着した在宅勤務。次なる新しい働き方は副業か、と。
そのとおりだと思います。
働き方改革では、周囲より半歩先んじていると自負する私(…というほどかっこいいものではなく、育児との両立で必要に迫られた結果に過ぎないのですが^^;)。
働き方改革は、つまり「働き方の自由」を求めるもので。
在宅勤務は、その現れのひとつに過ぎないのですよね。「するべきことをすれば、どこで仕事をしようと自由」という「働く“場所”の自由」。
その伝でいけば、「するべきことをすれば、いつ、どれくらい仕事をしようと自由」という「働く“時間”の自由」も出てくる。
働く場所と時間の自由を可能にするのが、裁量労働制となります。私もそれを会社に求め、私の所属する編集部は昨年から裁量労働制となりました。
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そして、この先にあるのは…
「働き先の自由」。勤めている会社以外にも、労働力を提供する会社がある。つまりは副業です。
なぜ、今の勤務先だけに忠誠を誓い、すべてを捧げる必要があるのか。自分の労働力を誰にどう振り分けるかは、自分の自由じゃないか。
…ということですよね、ちょっと乱暴に言えば。
でも実際に、働き方改革を突き詰めていくと、そこに必ず突き当たるのです。
もう、会社が雇用者の生活の責任を負う、という時代じゃない。雇用者が持つ労働力を、必要な分だけ提供してもらい、対価を払うという契約が、本来の雇用関係というものです。
先のアンケートでは、「副業禁止」の会社が55%となっていましたが。会社に不利益を与えたり、本業に差し障りがあったりしない限り、「禁止」までする合理的理由はないのでは?…と思ってしまう。
働き方については、私の会社の場合、少しずつ社長の耳元に吹き込んできたので^^;
副業についても、
「ちゃんと伝えてくれればいいよ」
と言われており、実質的に容認。
もちろん、同業他社で働くなど、倫理的にNGなことは論外として。
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私にとっての副業とは、「リスクヘッジ」と「自分の世界を広げる」ものです。
投資の格言として、「卵はひとつのカゴに盛るな」というのがありますよね。リスクは分散するのが鉄則。仕事も同じ。
変化の激しい時代、今の仕事で10年後、20年後も食べていけるかどうかわからない。出版業界はただでさえ斜陽作業だし。
また、ずっと同じ業界で同じ仕事だけしていると、新しいスキルが身についていかない。考え方も凝り固まってしまう。
共働きだし、特別な贅沢もしないし、困窮しているわけではない。だから、お金を稼ぐことはあまり必要ないのだけど、自分のために、それでも副業をあえてする。
そんな私が選んだ副業とは。
介護職です。
編集職とは、まったく畑違いの仕事。
一般に副職は、「本業で培ったスキルを生かして」と言われていますが。
たしかに一度、本業で培ったスキルを生かした副業をしたことがある(もちろん、書籍出版業とは全く関係のない他業種です)。
でも…そこには「先」がないんですよね。「お金を稼ぐ」という目的は達成させられるけれど。現在持っているスキルを切り売りしているだけで、新たな世界が開けるわけではない。
せっかく副業をするなら、新しいスキルが身につくような、本業以外に「得意」が作れるような、そんな仕事をしたい。
そうでないと、ただでさえ忙しい本業の合間を縫って働く意味がない。
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介護職に興味をもったのは、もちろん母が介護を必要とする身になったから。
介護の現場をいろいろ見てきました。そこで働く方々も(ただただ頭が下がります)。思うところがあり、そろそろ自分も傍観者ではなく、当事者として関わるべきだな、と。
介護って(介護だけじゃないですが)、「本当に世の中に必要とされる」仕事ですよね。
私の書籍編集の仕事は、ぶっちゃけて言うと、「世の中に絶対に必要ではない仕事」なんです^^;私の本がなくても、誰も困らない。
もちろん、必要としてもらえるような、読者の方に少しでもお役に立て、日々の励ましになるような本を作りたいと思っていますが、介護のように「今そこにある必要」ではないですよね。
20年以上、ひたすら「自己実現のために」仕事をしてきました。でもそろそろ、何か人のためになるような仕事がしたい。直接的に、「誰かのお役に立てた」と実感できる仕事がしたい…
それは「感謝されたい」という意味ではなく。もちろん感謝されたら嬉しいですが、もっと内的な、「やらなきゃ」という衝動、使命感に突き動かされているというか。
離れて暮らす私には、母の介護はできない。だったら代わりに、自分の住まいの近くで他の方の介護をさせていただこうと。
そんな気持ちで、今年ボランティアで近所の高齢者のお宅に掃除に伺っていたのでした。
けれども、私には徹頭徹尾ボランティアは向いていない^^;
謝礼金とはいえ、お金をいただく以上、仕事として真剣にやらずには済まない。そしてそうなると、1時間700円では「…最低賃金以下だよね?」と疑問になる。
仕事と家庭で忙しい中、せっかく貴重な1時間を捻出するなら、しっかり対価をいただいて仕事がしたい。
また、本来掃除なら、シルバー人材センターや家事代行に頼めるわけです。それをあえてボランティアに頼んでいるのは、「これが一番安いとケアマネから言われたから」と、訪問先のおばあさんから聞き、がくっと来たのもあります…
掃除などの家事支援も重要な介護のひとつだけれど、どうせなら、食事や排泄介助など介護のメインイベント(?)的な身体介助をしっかりやっていきたい。
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あくまで本業は現職として、副業として介護の仕事をしたいので、あてられる時間は限られています。今のところ、せいぜい週1回、それも3時間ほどでしょうか。それ以上を割り当てると、たぶん忙しくて破綻する。
その条件に合いそうなのが、在宅介護の登録ヘルパー。訪問介護事業所に登録し、派遣されるホームヘルパーです。
母もそうでしたが、在宅介護のヘルパーさんが入るのは、1回につき1時間ほど。
登録ヘルパーの求人募集では、1日1時間からOK、未経験者歓迎というところも多い(どこも人手不足なのです)。
「これなら私でもできそう!」と思ったのです。
ただ、必須条件として、「介護職員初任者研修」という資格を求められる。この資格がないと、身体介助ができないのです。
「介護職員初任者研修」は文字通り、介護職員の初任者(初心者)が受ける研修。
介護理念を一から学び、身体介助の技術を実践的に体得します。
この資格取得コースを、先月から受講しています。
初心者向けといっても、受講時間が130時間もある(*_*)
15日間通学するのが基本なのですが、コロナのため、最初の5日間分はテキストでの自宅学習となり、通学は10日になります。
すでに自宅学習期間は終わり、2日分の通学も終了しました。
通学では完全に実践。介護のベテランの講師から、車椅子の使い方やベッドメイキング、利用者さん(介護を受ける高齢者をこう呼ぶ)をベッドから車椅子に移乗する方法などを手取り足取り教わります。
受講生は12名おり、それぞれが交代で介護者役、利用者役となり、繰り返し練習します。
これが…すごくおもしろいのです。
体を使う仕事って、楽しい。本業が100%デスクワークなので、とても新鮮。
利用者さんの体を動かすのは、力づくではないこと。物理法則にしたがって、無理なく上半身を起こしたり、腰を上げたりすること。
かつて母のトイレの介助などをしたとき、全くでたらめなやり方だったなあと。
今後はベッド上での着替え、食事の介添え、そして排泄の介助(いわゆるオムツ交換)と学んでいきます。いよいよ本番という感じ、非常に楽しみ。
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私が介護職を副業に選んだのは、先々を見越して、ということもあります。
少子高齢化が急速に進行する現代、介護人材はますます必要になる一方、圧倒的に数が足りません。
10年後、20年後、いや30年後も引く手あまたの職業だろう。
また、在宅介護のヘルパーなら、高齢になっても続けられる。70代の現役ヘルパーさんを知っています。80代で続けている人の話も聞いたことがある。
編集の仕事は、できれば年をとっても続けていきたいけれど、今のペースで本を作るのはたぶん体力的にきつい。
50代後半、60代になったとき、たとえば本は年間3冊くらい作って、ヘルパーの方を増やす。
そんな働き方もありかと。
FPですから、金銭面もしっかり計算しています^^;
その頃には住宅ローンや教育費など、諸々の大きな支出がなくなっているし、やがて年金も入ってくる。
ヘルパーの方は時給なので、本業で働く方がずっと実入りが良いけれど、暮らしていくには困らない。
研修の修了は2月末。その後、ヘルパー登録が可能ですが、本業が忙して、もしかしたら副業をする余裕がないかもしれない。
でも、それでも良いのです。資格さえとっておけば、いつでも仕事が始められる。
まあ、おそらく多動な私のことだから、週1時間でもやろうとするでしょうな。
今はとにかく、無事修了できるよう、残りの8回の通学をやり遂げるのが目標です。